次亜塩素酸ナトリウムとは?
「次亜塩素酸ナトリウム」と聞いて何を思い浮かべますか?次亜塩素酸ナトリウムは、名前は難しいけれど、実は身近な成分。塩素系の洗浄剤や漂白剤のほか、水道水やプールの消毒、野菜や果物の消毒にもつかわれています。
次亜塩素酸ナトリウムは、優れた漂白力、洗浄力と除菌力を持っています。ウイルス、バクテリア(細菌類)、カビ・酵母(真菌類)および藻類など、知られている広い範囲の形態の微生物に対して効力を発揮する数少ない除菌剤です1。
ただし、洗浄剤や漂白剤に「まぜるな危険」と表示があるように、次亜塩素酸ナトリウムを配合した製品を酸性の製品とまぜると有毒なガスが発生して危険です。必ず単独で使用する必要があります。
ウイルス・菌への効果
新型コロナウイルス

厚生労働省のホームページには、テーブル、ドアノブなどには、市販の塩素系漂白剤の主成分である「次亜塩素酸ナトリウム」が有効と記載されています。
使用方法としては、市販の家庭用漂白剤を、次亜塩素酸ナトリウムの濃度が0.05%になるように薄めて拭きます。その後、水拭きすることがすすめられています2。
ノロウイルス

一般の消毒薬(エタノールや逆性石鹸など)では効果が弱いノロウイルスにも有効です。厚生労働省の「ノロウイルスに関するQ&A」でも、嘔吐物やふん便からの感染を防止するために、次亜塩素酸ナトリウム約200ppm(0.02%)で処理することがすすめられています3。
O-157

厚生労働省のホームページでは、腸管出血性大腸菌(O-157など)の予防法としてまな板やふきんを洗剤(台所用合成洗剤)洗浄 →水洗浄 →湯(55℃)すすぎの後、次亜塩素酸ナトリウム製剤で消毒することが推奨されており、濃度200ppm(0.02%)の次亜塩素酸ナトリウムに1時間浸漬するとよい、と記載されています4。
補足説明
ウイルスには、脂溶性の外膜を持つエンベロープタイプと外膜を持たないノンエンベロープタイプがあります。アルコール(エタノール)は、外膜を壊すことでウイルスを無毒化する効果があるため、ノンエンベロープタイプのウイルスへの効果は十分でないことがあります。

次亜塩素酸ナトリウムは濃度が薄くても除菌力が高い
次亜塩素酸ナトリウムの除菌(殺菌)力を示すデータの一例5

その他の除菌成分との比較
除菌効果をうたっている製品にはいろいろなものがあります。それらの主な除菌成分をあげてみると、以下のようなものがあります。
- エタノール
- 過炭酸ナトリウム
- 第四級アンモニウム塩
エタノール
エタノールを配合した除菌剤には、エタノールに他の除菌成分を配合した製品があります。手や指などのウイルス対策には、濃度70%以上95%以下のエタノールが有効とされています6。人体に対する毒性が少ないので手指の殺菌などに使用されますが、濃度が薄くなると効果が弱くなります。引火性があるので、取り扱いには注意しましょう。
過炭酸ナトリウム
過炭酸ナトリウムを用いた弱アルカリ性の酸素系漂白剤は、除菌作用、漂白作用共にそなえていますが、次亜塩素酸塩に比べるとその能力は劣ります。
第四級アンモニウム塩
薬用ハンドソープなどに用いられている第四級アンモニウム塩は、逆性石鹸ともいわれ、高い除菌力をもちます。しかし結核菌などの一部の細菌や多くのウイルスには、効果が見られない場合があります。
その他
日光消毒と熱湯消毒
その他に家庭での消毒殺菌といえば、日光消毒、熱湯消毒があります。
日光消毒:日光の紫外線と乾燥の効果によってバイ菌を殺します。キッチンで使うふきんやまな板も日光に当てることでいくらか殺菌できますが、汚れが落ちるというわけではないので、おもに乾燥が目的と思った方がいいでしょう。
熱湯消毒:バイ菌は熱に弱く、沸騰している熱湯をかければ短時間で死んでしまいます。ふきんや包丁を煮たり、まな板に熱湯をかけることで殺菌はできますが、火傷には十分注意しましょう。湯沸かし器のお湯は沸騰している熱湯より温度が低く、殺菌効果が低いことがあるので、注意が必要です。
除菌・殺菌・消毒の違い7

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開発者のこだわりをご覧ください。
防菌防黴(ぼうきんぼうばい)ハンドブック(1986)
参照元:厚生労働省ウェブサイト「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)」
新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
(参照2023年3月20日)
参照元:厚生労働省ウェブサイト「ノロウイルスに関するQ&A」
ノロウイルスに関するQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
(参照2023年3月20日)
参照元:厚生労働省ウェブサイト「腸管出血性大腸菌Q&A」
腸管出血性大腸菌Q&A (mhlw.go.jp)
(参照2023年3月20日)
殺菌・消毒に活躍する次亜塩素酸ナトリウム(日本食品洗浄剤衛生協会出版物1994年)
参照元:厚生労働省ウェブサイト「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)」
新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
(参照2023年3月20日)