1.背景
近年、トラックドライバーの労働環境改善が社会的課題として重要視されております。厳しい労働環境によりドライバーの確保に著しい困難を来し、物流の持続可能性への懸念も高まってまいりました。 また地球環境改善の見解からは、温室効果ガスの排出削減に向けた継続的な活動も重要な課題であり、これらの解決に向け新たな打ち手が必要です。 特に物流活動の中で長距離トラックの輸送は、①拘束時間が定常的に長時間化、②運行途上での車中泊など厳しい労働環境、③空車走行や待機時のアイドリングなどによる排ガス問題など、多くの課題を抱えております。更に「働き方改革関連法」による時間外労働の上限規制が導入される2024年に向けて、拘束時間を大きく削減するなど、ドライバーの労働環境を抜本的に改善することが早急に求められる状況となっております。
ドライバーの労働環境改善には、
- 単独車両での長距離運行を削減することで車中泊を減らし、毎日帰宅できる運行スケジュールを組むこと
- 納品先での待機時間を削減すること
などが必要となります。また、地球環境改善に向けた温室効果ガスの排出削減では、ムダな空車回送をなくし、積載効率を高めることが求められます。しかし、これらの課題を解決するためには、個別企業での取り組みでは不十分であることから、下記参加企業にて、製造業、流通業、物流業、パレットレンタル業といった、サプライチェーンを構成する主要な関係企業の協力により、「実車率100%とドライバー拘束時間短縮」を目指した【スワップボディコンテナを活用した中継輸送の実証実験】を実施しました。なお、本実証実験は、国土交通省のご支援のもと、「貨物自動車運送事業における生産性向上及び長時間労働改善に向けた調査」の一環として行われたものとなります。
2.実証実験について
- 実証実験の期間
2019年2月4日(月)~9日(土) - 参加企業
着荷主:卸店
発荷主:ユニリーバ・ジャパン株式会社、サンスター株式会社、
日本パレットレンタル株式会社
倉 庫:東陽倉庫株式会社、名鉄運輸株式会社
運 送:鈴与カーゴネット株式会社
(順不同) - 実証実験の概要(次項運行ルート概要参照)
- 空車や走行距離削減にむけ、従来7台のトラックが交互に運行していたケースにおいて、各社の輸送を組み合わせ、往復ラウンド運行を実施することとしました。
1. ユニリーバ・ジャパン相模原工場から同社高槻倉庫への輸送
2. サンスター高槻工場から同社米原倉庫への輸送
3. サンスター米原倉庫から卸店(横浜)への輸送
4. 上記各拠点と日本パレットレンタルのデポとの間のパレット輸送
- ドライバーが日帰りで運行できるように、「中継輸送」の仕組みを取り入れ、途中に中継拠点を設け、東側と西側の運行を別のドライバーが担当することとしました。
- 中継輸送を実施するに当たり、ドライバーのトラック乗り換えや、貨物積み替えなどが発生しないように、鈴与カーゴネットが保有する「スワップボディコンテナ車両」を利用することとしました。
- 待機時間を削減するため、各社で優先的な荷卸しを実施することとしました。
4. 実験の効果
- 環境負荷の低減
空車時間が無くなり、輸送距離も削減、積載率向上、待機時間の削減によって、CO2の排出量を26%削減しました。 - ドライバーの労働条件改善
荷卸しにおける待機がなくなり、労働時間が改善しました。ドライバーが毎日帰宅できるようになり、車中泊に伴う身体的疲労が軽減されました。 - その他の効果
これまでは複数名のドライバーが交代で運行する必要がありましたが、今回の仕組みでは、1人のドライバーが毎日、各ルートを固定的に運行することができるため、輸送品質が改善される効果も期待できます
3.今後の展開
今回の実証実験の効果をさらに検証したうえで本番導入を行います。また、長距離トラック輸送を巡る様々な課題の解決に向けた取り組みを、引き続きサプライチェーン全体の協力により進めてまいります。
注1)スワップボディコンテナ車両とは、車体と荷台(コンテナ)とを、エアサスペンションにより脱着することができる車両です。車体と荷台(コンテナ)を別個に運用することによって、貨物の積み卸しに伴う作業や待機を削減し、車両の運用効率を向上するといった効果が期待できます。
注2)中継輸送とは、長距離トラック輸送の中間点に中継地点を設けて、コンテナを他のトラックに積み替えるなどにより、短距離の輸送をつないで行うリレー方式の輸送です。これにより、ドライバーの労働環境(拘束時間)の改善などが期待できます。